たくさんの花がある中で、散るときが美しい花はおそらく桜だけでしょう。不思議なことにこの時期になると必ず荒天の日が来て、風がきちんと桜の花びらを散らせてくれます。以前、大河ドラマの1シーンで、浅野内匠頭が細川屋敷の庭先で、切腹する場面で前が見えないほどの舞い散る桜の花びらの中でのシーンが鮮明に目に焼き付いています。日本人は潔く散ってしまう桜の花のその美しさを感じ取れる感性を持ち合わせているのでしょう。
実は、私の妹の旦那の実感の近くのお寺に、大石内蔵助ほかの赤穂浪士の遺髪が収められているそうです。熊本も細川家が大切に保管してきたとのことで、忠臣蔵と細川家は不思議な縁で結ばれているようです。忠臣蔵はいつも年末にテレビなどで放映され、それを見ると年越しが近いと思いがちですが、私はいつの桜の季節を思い浮かべています。
潔く舞い散る桜には、主君に忠誠を誓った赤穂浪士の潔い心と、見事な人生の引き際が映し出されているように思えます。そして、地面に落ちた桜の花びらはいつしか降る雨によってきれいに流されてなくなってしまいます。だれが、決めたわけでもなく、毎年きちんと繰り返されることは、人の営みでは説明できない不思議な出来事です。
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